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私は・・・ (その3)

私は・・・  (その3)



私は通勤が好きだ。
 正確に言うと
私は通勤風景を
 毎日の日常を流れる人々を眺めるのが好きなのだと思う。


私は日々通勤バスや電車の混み具合が全く違う事を不思議に思う。
 同じような平日の
  同じ曜日
   同じ時間のバスや電車に乗って
    いくらかは見覚えのある顔ができたりするものの
     混み具合が極端に違う事がある。
      なぜだ?
       みんなが一斉に寝坊したり
        朝に点けたTVで気になるニュースに気を取られたりして
         1分や2分
          家を出るタイミングが遅れたからだろうか?

私は人々のファッションよりも
 顔が気になる。
  通勤風景は日替わりの美術館でもあるのだ。
   生きた彫刻の
    かすかに微笑んだり不安そうだったり憂鬱そうだったり疲れていたり
     そんな表情を眺めるのが好きだ。

私は美しい顔が好きだ。
 男女の差は関係無い。
  ぱっと一目見て
   際立った顔立ちというのはやはり人目を
    私の目も引く。
     彼らの美しい面がその裏側の命によって蠢く様は見ていて飽きない。

私は味のある顔が好きだ。
 そこに彼らが辿ってきた人生と
  彼らの人格がにじみでてきているように感じるからだ。
   例え頭の禿げた中年のサラリーマンでも
    

私は笑顔が好きだ。
 出勤風景なら尚更
  普段笑顔の人を見る事は少ない。
   一番見るのは、おそらく恋人と語らう女性達の笑顔だろうか。
    携帯越しにでも話すだけで幸せそうに微笑む彼女らは
     確かに美しい。

私は朝二人揃って出勤する恋人達の姿を見てうらやましく思う事もある。
 満員電車の混雑の中で節度ある抱擁を交わし
  周囲の迷惑にならぬ程度で小声で会話し
   くすくすと幸せそうに笑う彼らの姿を見るのは楽しい。


私は行き交う人のささいな事も気になったりする。

私は例えば若い女性達の持つ紙袋が気になる。
 高価そうなハンドバックがどうでもいいような紙袋に隠されてるのは
  私にとってどうでも良い事は確かなのだが、
   支払った福沢諭吉の枚数の意味を減じているように思うし
 そうでなくとも
  ブランドの紙袋を自慢気に下げて出勤に使うのもいかがなものなのだろう?
   ティファニーとかブルガリとかでワタクシは買い物しましたことヨ!
    とでも自慢したいのだろうか?
     男が同じ事をやったとしたら
      とてもじゃないが目を向けられるような事にはなるまい。
       人によって価値観は確かに違うんだけど、ね。

私は例えば若い女性達の髪飾りや髪留めが気になる。
 特に服装とかアクセサリとかもばっちり決めてるのに
  頭には100円ショップで買ったような髪飾りや髪留めが載っていたりすると
   もったいない、
    と素直に思ったりする。
 もし私が彼女らの恋人なら
  きっと素敵な銀細工で作ったものをプレゼントするのに。
   まだ指輪とかプローチしか作った事は無いけどね。


私は電車の入口で乗り降りの邪魔になるのが分かってて踏ん張る人が嫌いだし
 電車から降りる人の波に逆行して空いた席に向かおうとする人はもっと嫌いだ。

私は電車の吊革広告で性懲りも無く繰り返される下品な文句が嫌いだし
 車内とかでエロイ写真やページが出てる週刊誌や新聞を恥ずかしげもなく
  広げてる人達
   主におじさん達も嫌いだ。

私は禁煙のホームでタバコを吸う人が嫌いだ。
 彼らの延髄を何度蹴り飛ばしたことか
  その回数は多すぎて覚えていられないほどだ。
   脳内妄想でのみ、でだが。
    残念なことに。

私は通勤路でタバコを吸う人も嫌いだ。
 目的地が同じ方角にあって
  同じ様な速度で歩けば、煙を吸い込むはめになる。
私はだから早足で歩く。
 少なくともそう望んだ時は。

 後ろ姿が気になった女の人をさりげなく追い越して
  なるべくわざとらしくなく振り向くのも楽しい。

 そんな風にして
私は会社に着き
 働き
私は家へと帰る。

 そんな
  なんでもない通勤風景が
   だから
私は好きで

 繰り返されるようで
  繰り返されない
   ありふれた通勤風景を
私は楽しんでいると思う。




20個の私は・・・ ×5の詩のその三
2004/10/2 著


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